出発
今年で北海道ツーリングは3回目になるが、毎度のことながら出発までの準備(コース設定、航空券や宿の予約、携行品の買い出し、荷造りなど)は一苦労である。
それでも今年は去年と同じ装備でツーリングに出かけることにし、携行品の買い出しを最小限にとどめたので、去年に比べれば幾分余裕を持って出発を迎えられた。
また、今年は自転車以外の荷物を空港宅急便で羽田空港まで事前配送しているので、輪行が去年に比べ大幅に楽になった。
7月21日。関東地方は未だ梅雨明けしていない曇り空に覆われている。朝6時過ぎに最寄の駅まで自転車を運ぶ。半袖だと多少の肌寒ささえ感じる。
例年なら最寄駅まで辿り着くことには汗だくになってしまうのだが、今年は本当に涼しい。
土曜日の朝6時にも関わらず、電車の中や駅のホームはそこそこの人出だ。
自転車を抱えて電車に乗り込む場合、他の乗客の乗り降りの邪魔にならないように、電車の先頭車両または最後尾車両の座席がないスペースに陣取ることにしているのだが、
あいにく今日は競馬新聞を抱えたオッチャンたちが微妙に邪魔なポジションに立っている。思わず(こんな朝早くからウロチョロすんなよ。あっち空いてるぞ。)とか言いたくなる。
いや、明らかに私の方が邪魔なんですけどね・・・。
浜松町駅でチェックインを済ませ東京モノレールに乗る。ホッとする間もなく羽田空港に到着だ。
さて空港に着いてからが少し忙しい。
まず、自転車を手荷物カウンターに預ける。手ぶらになったところで、今度は階段を降りて到着ロビーまで空港宅急便を取りに行く。
宅急便カウンターには見覚えのある段ボール箱があった。当然ながら無事に届いていた。(実は前日にインターネットで、自分が送った荷物のコードを入力して、荷物がどこにあるか確認して、無事羽田空港に到着していることは確認済みだったが、あらためて現物を確認しホッとする。)
その荷物を持って再び出発ロビーに行き、手荷物カウンターに預ける。そして旅行保険に加入。
ようやくここで一息。(ふ〜。)喫茶店でサンドイッチを食べ朝食とする。
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羽田空港まで輪行
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羽田空港出発ロビー
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朝食を終え搭乗ゲートへ向かう。
10時15分のフライトまでしばらく時間があるので、今日の走行地域である北海道千歳市周辺の天気をyahooの天気予報で確認する。曇り時々雨だ。雨の覚悟はしているけれども、何とか降られずに走りたいものだ。
やがて搭乗案内が始まり機内に移動する。機内は半袖では肌寒く後で毛布をもらおうと思っているうちに空調が効いたのか暖かくなってきた。
そしていよいよ離陸だ。いつも思うが東京から北海道まではあっという間だ。
飛行時間にして1時間30分程度だが、離着陸で30分使い、水平飛行を保つのは1時間程度だろうか。
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搭乗案内が始まり機内に移動する
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窓から見える空はきれいな青空だ。当然ながら雲の上は快晴なのだ。このまま北海道も晴れていて欲しいものだ。
着陸に向けて分厚い雲を抜ける。雲を抜けたということはその下の天気は少なくとも曇りである。
滑走路が近づいてくる。窓には雨粒で水平な線が無数に描かれている。そして滑走路に目をやると大きな水溜りが見える。
残念ながら2007北海道ツーリングは雨のスタートとなってしまった。
飛行機を降り、到着ロビーまでの移動用バスに乗り込む際に、少し外に出たが、雨は思ったほど降っていない。ほとんど霧雨といった感じだ。
滑走路にできた水溜りを見る限りはもう少し強い雨が降っているものと思っていたがこれはうれしい誤算だ。
到着ロビーで手荷物と自転車を受け取り荷物用カートに積載し空港内を移動する。
移動日の今日はジーパンにポロシャツ姿で自宅を出発してるので、まずはツーリングウェアに着替える必要がある。
荷物用カートをトイレの前に横付けし、着替えを持ってトイレの個室に入る。空港のトイレは概してきれいなので助かる。
サイクルジャージに着替え、再び荷物用カートを押して、空港の建物の外に出る。今日は雨なので屋根のあるスペースを見つけ、そこで自転車の組み立てだ。
新千歳空港では出口に向かって左側の方が人通りが少ないので、落ち着いて自転車を組み立てられるように思われる。
輪行バッグのチャックを開け自転車の無事を確認する。航空機で輸送中にやや雑に扱われた模様で、リアディレイラーが微妙に傾いているような気がした。リアディレイラーの状態は後輪をはめてから確認することにする。
続いて、自転車を逆さまに立たせて、輪行用のエンド金具を外し、前輪、後輪の順にセッティングする。ペダルを回してリアディレイラーの変速をテストしてみる。
トップ側への入りがやや悪かったがそれほど重大な障害ではなさそうだ。何かあってもツーリングが終了したらオーバーホールすることにしよう。
自転車を起こしてブレーキワイヤーをセットする。これで自転車の組み立ては完了だ。
次に簡易リアキャリアをシートポストに装着しリアキャリアにパニアバッグを装着する。最後にパニアバッグにレインカバーを装着し準備完了だ。
輪行バッグを4つ折りにし付属の携行用の袋に収納し、フロントバッグとサイクルメーターをセットし、小雨の降る新千歳空港を後にする。
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レインカバーを装着し準備完了
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出発後間もなく、前後サイドバッグ装着、テント・寝袋装備の重装備自転車に乗った男性に出会う。自転車をとめて軽く挨拶をする。
私より少し年上と見受けられる彼は、支笏湖のキャンプ場に宿泊予定とのことだ。
この雨の中キャンプとは大変だろうな。私は、とほ宿ラップランドに宿泊予定なのだ。
さて再び出発する。普段の日帰りツーリング時よりも荷物が重いので、慎重なハンドル捌きをしながら、空港前の広い道をゆっくりと進む。
薄暗い空の下小雨がパラつくが、時折、北海道特有の高原のような匂いが感じられ、普段とは違う土地で自転車に乗っているのだと実感する。
空港前の道路とR36との立体交差点で道を間違えて少し引き返したが、支笏湖まではそれほど複雑な道のりではない。
R36からr16へと左折すれば後は道なりに進むだけなのだ。
ロングツーリング初日は何だかペースがつかめないものだ。
考えてみれば、つい昨日までは都会のオフィスで働いていたのだから、大きな荷物を積んで見知らぬ土地を走る生活に慣れるまで時間がかかるのは無理からぬ話なのだ。
そんな時は無理せずのんびり進むに限る。
交通量が多い千歳市街地を抜け、支笏湖へと続く道道16号へとハンドルを切る。
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空港前の広い道をゆっくりと進む
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交通量が多い千歳市街地
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霧のような細かい雨粒が次第に手や顔や服を濡らしていく。立ち止まるとなんてことのない弱い雨なのだ。
路上の水溜りを通るたびに泥水が前輪で跳ね上げられ、顔や服を汚す。靴の中も次第に濡れてきた。
そういえば、過去2回の北海道ツーリングではこれ程の雨に降られたことは少なかったな。
辺りには段々住宅がなくなり、道の両側に森が広がりだす。
交通量は少ないが、所々、車道に中央分離帯が設置してある。このため追い抜いていく車が反対車線に大きくはみ出しすことができず、比較的私の近くをすり抜けていく。
追い抜いていく車はみなスピードを出しているので思わず身構えてしまう。特に大型トラックや観光バスが後ろから迫ってくる音は怖いなぁ。
雨の下のうっそうとした森の景色も気分を沈ませる。晴れていればまた印象も違ったろうにな。
支笏湖付近までひたすら同じような景色が続く。途中に集落があるわけでもなく、走りに集中できるといえばできるのだが、面白みのない道だ。
おまけにじわじわとした登りが続いているので快走というわけにもいかない。
途中で自転車ツーリストを1人追い抜いたのが、唯一の出来事だった。
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霧のような細かい雨
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道の両側に森が広がりだす
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支笏湖
4時ごろに支笏湖の南東の湖畔に到着した。手元のGPSで確認した限りでは今日の宿ラップランドまではあと1km程度の距離だ。
支笏湖北東部には小さな温泉街があり、支笏湖周辺で唯一都市的な機能を持った地域となっているが、ラップランドがある支笏湖南東部は、携帯はおろか地上波テレビの電波さえも入らない。
じゃり道を進み支笏湖の水辺まで近づいてみる。少し先の湖畔に、モラップキャンプ場のテントサイトが見える。すでに数張りのテントが設営されている。
霧に覆われた支笏湖は、辺りの静けさと相俟って神秘的な雰囲気を醸し出している。
しばらく湖畔でたたずんでいると、いつの間にか雨が上がっていた。
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支笏湖の南東の湖畔に到着
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霧に覆われた支笏湖
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4時半を回ったのでそろそろラップランドに向かうことにする。
ラップランドはいわゆる「とほ宿」である。「とほ宿」とは、一人旅の旅行者でも過ごしやすいよう配慮された、基本相部屋のアットホームな宿だ。
北海道を自転車、バイク、電車等で旅する人が良く利用する宿なのだそうだ。
私は3回目の北海道ツーリングにして初めてこの手の旅人宿に泊まることにした。
過去2回のツーリング時にも、とほ宿の存在は知っていたものの、「旅人同士の触れ合い」にどこか気恥ずかしさや近寄り難さを感じていたため、利用しなかった。
ただ、その場合、普通のホテルや旅館に泊まるのだが、そういった普通の宿は、どう見ても汗や泥にまみれた自転車乗りを歓迎はしていない、という空気を感じた。
また、食事も一人で採らざるを得ないことが多く、旅の成果?をあーだこーだとわめき散らす相手がいないので寂しいのも事実だった。
そんないきさつもあって、今回は思い切ってとほ宿とかユースホステルといういわゆる旅人宿を利用してみることにしたのだった。
湖畔から道路を一本挟んだ所に大きな駐車場があり、その奥に1件のログハウスを発見。おそらくこれがラップランドだ。
ログハウスの右手にはライダーハウス樽前荘があり、そこに宿泊すると
思われる年配ライダーと少し立ち話をする。
普段あまり関わらないような人と、普段の生活からは考えられないシチュエーションで話をするというのは意外に大変だ。
特に私は旅人宿初心者なくらいなので当然「旅慣れ」していないので、こういった場合の当たり障りのない会話というのが結構難しい。
ただそれは今後続く旅の中で面白いくらい解消されていったのだが。
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ラップランド
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宿に着いた私は全身雨と泥でビショビショだ。靴の中もずぶ濡れで、いくら旅人の扱いに慣れている「とほ宿」とは言え、
この身なりだとちょっと引かれるだろうなーと覚悟していた。
ところが、予想に反してものすごく手厚いもてなしなのだ。
玄関を開けるなり、足拭き用のタオルが用意されており、「それで足拭いちゃって」とオーナーさん。
足を拭いている間に背中にはねた泥水を別のタオルで拭いてくれた。
部屋に入るとすぐに雨に濡れた物用のビニールシートが用事してあり、靴下、グローブ等濡れ方のはげしかったものを置く。
そして靴が明日までに乾くようにと靴の中に詰める新聞紙を渡してくれた。
予想を裏切るもてなしぶりに舌を巻いた。(さすが旅人慣れしてる!)
後で分かったのだがこのオーナーさん、日本一周を達成したこともある筋金入りのチャリダーだったのだ。道理で。
それにしても、特にこんな日は普通のホテルや民宿に泊まらなくて良かった〜、とホッと胸を撫で下ろした。
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食事室兼談話室
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2階の部屋で雨に濡れた服を着替えすっきりした後は、1階の食事室兼談話室で木の温もりが感じられる居心地の良い雰囲気を味わう。
先客の男性がいたのだが、この方も自転車乗りとのことで話が弾む。
やがてオーナーさんから支笏湖温泉に送るとの声がかかり、2人してオーナーさんの車で支笏湖ユースホステルまで連れていってもらう。
自転車の話や旅の話をしながら支笏湖温泉街まで窓の外の景色を楽しんだりする。
なんか修学旅行にでも来た気分だなぁ。・・・って三十路も過ぎたというのに、こんなことでいいのか?ふと冷めた自分が顔を出す。
まあいいじゃないか。旅を楽しもう。
支笏湖温泉はヌルヌルとした泉質で風呂上りには妙に肌に張りが出たような気がする。風呂から上がり、風に吹かれながら冷たいスポーツドリンクを飲む。
あ〜気持ちいいなあ。
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木の温もりが感じられる
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支笏湖ユースホステル
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再び宿に戻ると、夕食の準備が進んでいて、いい匂いがする。
どうやら鮭のチャンチャン焼きのようだ。
オーナーさん夫婦と4人でテーブルを囲む。なんかものすごくアットホーム。というかオーナーさん達にとってはまさに家なんだよな。
おじゃましまーすという感じながらこっちは金払ってる客なんだよなぁという微妙な距離感。まあ、いい経験です。
夕食後はちょっとしたおやつタイムみたいなのがあり、お茶とお菓子でまったり和みましょう、という雰囲気を醸し出したかと思ったら、
急にビジネスライクになり「じゃあ会計を先に済ませちゃいましょう。」
う〜んやっぱり微妙な距離感。(この後泊まったとほ宿はどこもそんな感じだったので慣れた。そういうシステムなのね。)
それでもその後はみんなで地図を見ながら旅の思い出話やお勧めコースなどを語らうという微笑ましい光景が見られた。
・・・と思ったら、こういう情報が欲しかったらこれ買ってね、と、とほ宿が出版したっぽい情報誌を勧められる。
いやそんなに気にならないですよ、普通のは人は。私がちょっと敏感なだけです。
ふと、オオミズアオという蛾が一匹、蛍光灯の明かりに呼び寄せられ、窓の外に、白くて薄い羽を広げてペタっととまった。
それを見てオーナーさん「もう二、三匹来るようだと明日は雨止むかな〜」
蛾は雨が続く日には葉っぱの下に隠れて出てこないのだそうだ。
「虫の天気予報は人のより当たるんだ。」
テレビも入らないような場所で自然とともに生きていると蛾を見る目もそういう風になるのだろうか。
都市で暮らしていると蛾なんか害虫以外の何物でもないなあ。
なんだかんだで初めてのとほ宿の夜はとても楽しく過ぎていったのだった。
11時まで話し込んで、さすがに眠気に襲われ皆さん就寝。
明日はせめて雨は降らないで欲しいなあ。