6日目 最終日
6日目 最終日
長かった旅も、今日でいよいよ終わりだ。
9時過ぎにホテルをチェックアウトする。
今日は旭川空港まで最後のツーリングだ。
外へ出る。ギラギラと照りつける陽射しに思わず目を閉じる。
半そでのTシャツから伸びる2本の腕は、真っ黒に日焼けしている。
空港に寄る前に、まず、郵便局に向かう。
テント、寝袋などの荷物を「ゆうパック」で預けるためだ。
郵便局の駐輪場で荷物を降ろしていると、大粒の汗がポタポタと落ちて、とまらない。
荷物を抱え郵便局の中に入る。しばらく涼んでから、荷物を預ける。ぎゅうぎゅう詰めの大きな旅行用バッグ
1個。自宅(神奈川県)までの送料は、1000円程。意外に安かった。
さあ、これでだいぶ身軽になった。真夏の空のもと、旭川空港に向けて、最後のツーリングだ。
旭川の市街地を抜け、昨日と同様、R237沿いにしばらく進む。体中の水分が蒸発してしまいそうな陽射しだ。
途中、コンビニでスポーツドリンクを飲み給水。
大きな交差点を左折し、丘の上にある旭川空港を目指す。
なかなかの登り坂が続く。空港へ向かう観光バスやタクシーに追い抜かされる。
視線の先には、空港を離陸したばかりの飛行機が小さく見える。真っ青な空と白い飛行機とのコントラストがきれいだ。
最後の坂を登り切り、空港の敷地内に入った。
いくら地方の空港とはいえ、自転車で空港に乗り付けるなんてのは生まれて初めてだ。
周りの観光客を横目に、素早く輪行袋に収納。
荷物をすべて預け、お土産を買いながら、フライトの時間を待つ。
そして、ついに北海道を発つ時が来た。
機内に乗り込み狭い座席に座る。長い旅から解放された安心感と疲れから、猛烈な眠気におそわれる。
思い返せば無謀な旅だったなあ。
出発前夜まで準備に追われ、いざ旅立った初日から、釧路空港でのハチの大群を前にこの旅をあきらめかけたものなあ。
窓の外を見ると、6日間汗だくで走った北の大地がどんどん小さくなっていく姿が見える。
色々なことがあったなあ。
道東の大自然に溶け込んだキャンプ泊。
摩周湖・屈斜路湖への行く手を阻んだ熊。
疲れきった体を癒してくれた町外れの温泉民宿。
うとうとしていると飛行機は早くも高度を下げ始めている。北海道から東京までは飛行機に乗ればあっという間だ。
ただ、その間には大きな壁があるように思えてならない。
自然と都市の壁である。
都市生活では、蛇口をひねればいつでも清潔な水が手に入るし、夏の暑い日もクーラーを使えば全く苦にならない。
どこへ行くにも自動車でらくらく移動できるし、気に入らない虫や動物はあらゆる手を使って人間のいるところには寄せ付けなければよい。
たしかに便利で快適であることは否定できない。だけど時には、人間が自然の一部だということを認識することも必要なのではないか。
大自然の中に身をおけばそれは自ずとわかってくる。都市という人間本位な「造り物」はあくまで特殊な環境なのだ。
大昔はそんなものはなかった。川の水をくみ、歩いて移動し、虫や動物と共生していたのだろう。
昨今多発している自然災害や異常気象の原因が何かはわからない。だが、近代都市の発展が、自然と人間の共生のバランスを微妙に狂わせているのは
おそらく間違いないだろう。
飛行機を降りる。体中ベトベトするような湿気を含んだ都心の熱気は、やっぱり異常だ。
急に降り始めた、スコールのような夕立から逃れるように家路を急ぐ。