3日目 民宿
3日目 民宿
これからどうしようか?結局、摩周温泉付近まで、引き返してきた。今日は屈斜路湖畔の和琴キャンプ場にとまる予定だったが、
熊への恐怖心から、目的地まで行けず途方にくれる。
摩周は相変わらず霧交じりのどんよりとした天気だ。
そうこうしているうちに午後4時近くなり、曇り空の摩周の街はさらに暗くなっていく。このままじゃまずい。
なにしろこの旅、航空券の都合上、最終的には旭川空港まで辿り着かなければならない。残された日数は2日半。
どうやら、自走で行くというのは
無理になったようだ。では、どうする?今日これから電車かタクシーで旭川まで行くか、とりあえず、ここで1泊して、明日
電車かタクシーで旭川へ移動する。冷静に考えれば後者の判断が良く、前者は無茶ということになるが、
このときの私はとにかくこの摩周から早く出てしまいたかった。
深い霧に包まれた四方の山々に、熊が潜んでいるこの街に泊まるのは、何だか得体の知れない恐怖があった。
とりあえず、駅に行ってみよう。
出発したものの、摩周駅までは、アップダウンを含む5kmを走らねばならなかった。
霧雨にだいぶ濡れてしまいながらも、なんとか摩周駅に到着。
駅前に自転車を投げ出し、まず、タクシーの運転手に旭川までいくらか聞く。
5万円かかるそうだ。それなら、航空券を買いなおしたほうが良い。
電車は料金は1万程度だったが、本数が少なく、今からだと旭川に明け方着く電車しかない。仕方がない。今日は摩周に泊まるか・・・。
選択肢を絶たれいよいよ、この不気味な摩周に泊まることになってしまった。
駅の観光案内所で宿を手配してもらう。
案内所の人の勧めで、街のはずれにある温泉民宿に泊まることにした。
駅前の駐輪所にMTBを停めて、荷物を持ってタクシーに乗り込む。このタクシーの運転手の息子が、何と今私が住んでいる市で働いているとのことで
、ローカルな話題に花が咲いた。
民宿に着いた。きれいな民宿だ。ペンション風の建物は新築に近い。
玄関を入ると、夫婦経営の奥さんが受付をしてくれた。
この奥さん
(後からすごくいい人だとわかったが)はじめはちょっと無愛想な感じがした。それでいてなんか変なところに食いつくみたいで、
私がMTBツーリングに来ているといったら、根掘り葉掘り質問してきた。
一通り質問を終えるとまた、無愛想な感じで、ドライヤーと髭剃りと
部屋のキーを渡してくれた。ドライヤーと髭剃りというのは駅で予約する際に、私が、備え付けてあるかどうか確認したものであるが、
いずれも昭和20年代のもののような旧型だった。ドライヤーにいたってはドイツのメーカー製の、全身銀色の金属でおおわれたもの。
不思議なことに両方とも新品同様なのだ。今時どこで入手するのか?
ま、とにかく部屋に戻り、荷物整理だ。木のいい香りが漂う、いい家だ。多和平で濡れたまま収納したテントを床いっぱいに広げ、冷房で乾かす。電気製品を充電し、
服を整理。よし。一応片付いた。
6時過ぎに夕食とのことなので、その前に風呂に入るとする。大きいが、普通の家の風呂のようだ。ただ、今日の疲れがとれてすごく幸せな気分だ。
全開の窓の外には畑の手入れをしている人が見える。少し空が明るくなってきたようだ。明日は晴れるだろうか?
風呂を終え夕食をとりに食堂へ行く。1組の夫婦がいた。札幌からきているようだ。料理を運んでくる民宿のおやじさんは無骨だが気が良さそうな人だ。
料理のメニューが変わっていた。中でもサメの肉の酢味噌漬け、というのは今まで見たことも聞いたこともない。奥さんいわく、旅話のネタになること間違いなし。
・・・確かにネタに使わせてもらいました!その他も色とりどりの個性的な料理が並ぶ。私はビンビール1本を飲みながら、すべて平らげた。
夫婦1組が部屋に帰った後、
今日、熊と遭遇したことをおやじさんたちに話してみる。この摩周の民家にも時折出没するそうだ。
明日からの予定などを話し込んでいる
うちに、私は摩周の町に対する偏見がだんだんなくなっていくことに気付いた。おやじさん夫婦がちょうど私の両親くらいの年恰好だったということもあり、妙に安心して
色々と話し込んでしまった。