2日目 多和平その1
2日目 多和平その1
標茶の市街地を抜け、国道391号を北上する。
思えば、今日は朝からこの国道391号をひたすら走っている。
湿原付近では山道のように狭くなったりしたが、標茶のあたりからは道幅が広く走りやすい。高低差もほとんどなくなり、
まっすぐな道路が続いている。標茶の市街地から離れるにつれ、民家や商店がなくなり、周りには牧場や草原が広がり始めた。

人気のない草原が続く
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午後4時をまわり、薄日ながらも陽が暮れ始めているのを感じた。周りの草木も夜を迎える準備をし始めているように感じる。
標茶駅の次の駅である磯分内駅までの間は民家も全くなくなり、心細い旅が続いた。そして、足と尻に疲労がかなり蓄積しているようで、
ペダルをこぐペースも随分と落ちた。それでも走っている限り目的地は近づいてきているということを信じて力をふりしぼった。
磯分内の駅前に到着した。駅前といっても小さな公民館や郵便局があるだけだ。さっき見た標茶の駅が実は結構栄えていたことに気付いた。
郵便局から出てきたお婆さんに多和平キャンプ場への道を尋ねた。
「ここをずっとまっすぐ行くと右手に小さな看板がでてるからそこを右に曲がって・・・。」
何しろ目印がないから説明も難しかろう。
「どれくらいいけばその交差点に着くんですか?」
「う〜んそんなにたいした距離じゃねぇ。私が歩いていけるくらいだから。」
なるほど、じゃもうすぐだな。お礼を言い、その交差点へ向かう。
しかし10分以上走ったがまだその交差点が見当たらない。もしや見過ごしてしまったか?少し不安に思ったが大きなカーブの先にどうやら
交差点があった。都会人の感覚で物を考えちゃだめだな。あのお婆さんは30分くらいは普通に歩くということなのだろう。

農道へ入る
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交差点を右折し、1車線の農道を走った。多和平は山の上にあるので、ここから先は基本的に登り坂なのだ。
この農道の左右には牧場が広がっている。
標茶の辺りの牧場とは違い、道路からかなり近くに牛の姿が見える。よく見ると、牧場と道路との境に背の高いフェンスと、その上に鉄柵が設置されている。
牛が逃げ出さないようにするためなのか、それにしても、随分と高い位置にまで鉄柵があった。
時折「牛に注意」の道路標識があり、牛の足の骨のような物体が
道路に落ちていた。
ところでこの農道、「弟子屈(てしかが)熊牛原野線」というらしい。牛はいいけど熊はちょっと困るな・・・。ここら辺はとりあえず左右が牧場なので
熊は出ないだろうが、大自然の中に身を投じた以上そういったリスクもあるのだと実感した。
登り坂の途中ある牧場を背に休憩を取った。背中に赤いリュックを背負って水分補給をしていると、後ろが妙に騒がしい。
「モォ〜、モォ〜・・・・。」
牛の鳴き声と、首につけた鈴がカラカラと鳴る音がする。それも1頭や2頭ではない。
いやな予感がして振り返ると、唖然とした。10頭くらいの牛の群れがフェンスぎりぎりのところまでなだれを打って押し寄せてきている。
中にはダッシュしかけてこようとする牛もいる。
どうやら背中の赤いリュックを見て興奮しているようなのだ。
闘牛士とかテレビの中の世界でしかないと思っていたが、本当に牛は赤に反応するんだと身をもって知った。

多和平まであと少しだ
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キャンプ場までもう少しというところで、ついに自転車を降りて歩き始めた。
パノラマ展望で有名なキャンプ場ということは
周囲のどこよりも高いところにあるということなのだ。
周りの景色も開けてきて、ようやく頂上が近づいてきたようだ。
精も根も尽き果てようやく多和平キャンプ場に到着したのは午後5時を回った頃だった。