1日目 釧路空港
1日目 釧路空港
釧路空港のロビーは人が少なく、殺風景な印象だ。預けた荷物をすべて受け取り、空港の建物の外に出る。
空港の建物の前はターミナルになっており、バスとタクシーの発着場所になっている。
ターミナルの奥には、車のほとんど止まっていない巨大な駐車場が広がっている。その駐車場の外側を道道65号線が走っている。
空港は高台にあるようで、道道65号線は林の中を下って国道240号線へと続いているようだ。
まずはMTBの無事を確認したい。早速組み立てに入る。羽田空港で、自転車を荷物として預ける際に、壊れても文句を言わない旨の誓約書を書かされたが、
どうやら無事のようだ。
次に、荷造りに入る。まず、リアキャリアにパニアバッグを取り付け、
リアキャリアの上にバイク用のロープで旅行バッグを固定する作業だ。
簡単そうに思えたこの作業だが、いざやってみると何点か問題が発生した。
まず、このMTBにはスタンドがなく、木や建物に寄りかからせて作業せざるを得ないため、ちょっとした力加減でバランスを崩し倒れてしまうこと。
また、バス停の近くで作業をしているため、航空便の発着にともない、バス停に向かう人の流れが多くなり、どうしても気が散ること。
さらに、11時過ぎになり、30度近くまで気温が上がり、暑いこと。
そして一番厄介な問題が、「虫」である。
たぶんハチかアブだろうが、荷物を固定する黒いゴムひもに異様に反応する。
蛇か何かだと思って攻撃してくるのだろうか?
こちらとしては、せっかく荷物を固定しかけても、かなり大きなハチ(アブ)
がゴムひもを持つ手をめがけて飛んでくるので思わず手を離してしまう。
その繰り返しで結局12時近くまで荷造りをしていた。
ようやく荷造りが完成したころには、空港利用客は途絶え、辺りは静まり返っていた。暇を持て余したタクシーの運転手が話しかけてくる。
今年の夏は、北海道も、異常に暑い日が多いそうだ。
荷造りを終え、空港前の歩道を通り道道65号へ向かう。
いきなり車道は恐いから、練習の意味で、この歩道で荷造り後のMTBに試乗してみる。
リアキャリアにすべての荷物を積んでいるため、
重心がかなり後ろにあるようだ。
ハンドル操作も、何も積んでいない状態とは違い、気を許すと左右にフラフラと振れてしまう。
走行感も、
ずっしりと地面に根をおろしているような重さだ。
何より、積荷が崩れまいかという心配が常にあった。とにかく慣れるまでは慎重に運転していこう。
歩道がとぎれ、いよいよ道道65号へ合流だ。2車線あるものの道幅は決して広くはない。いわゆる北海道の道という感じではなく、
山梨県によくあるような林道をイメージさせる道路だ。交通量はそれほど多くない。

林道のような道を行く
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周囲の林の中を曲がりくねりながらの下り坂が続く。
ブレーキをかけながら進まないと、あっという間に加速がついて、自転車の制御が難しくなる。
それでも、さっきまで強い日差しの中で荷造りをしていたので、木陰の間を風を切りながら走る快感には勝てず、ところどころノーブレーキで飛ばす。
たまに車が通るものの、人影はまったく見られず、MTBのブロックタイヤの放つ摩擦音が木々の間にこだましている。
道道65号を下りきると、急に景色が開け、一面、見渡す限り、畑とも荒地とも区別がつかない、平地が広がった。
その広大な景色に、思わず圧倒された。
ここでは、きっと土地を持て余しているのだろう。歩道にしても畑にしても、
手入れが行き届いていないのだが、それがまた、土地に対する執着の低さを表わしているように思えた。
小さな庭を熱心に手入れする都会人とは
対照的である。

広大な景色
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やがて大きな交差点にぶつかった。おそらく国道240号線との交差点だろう。道路標識がある。釧路市外と鶴居村への距離が表示されていた。
手元の地図(ツーリングマップル)と比較し、現在地を確認。順調に山花公園オートキャンプ場に向かっている。
自転車を止め地図を見ているとハチかアブが私の周りをブンブン飛んでいることに気付いた。
特にリアに積んだ黒いバッグの周りには多くの虫が飛んでいる。
そういえば空港で荷造りをしている時もいっぱい飛んでたな。まあ日本有数の湿原である釧路湿原が近くにあるので多少の虫は仕方ない。
とりあえず、赤いリュックから、タオルを取り、汗を拭ってから、ぱっぱっと軽く追い払った。
それにしても、今日は暑い。
今日1日だけで、普段の1週間分の汗をかいたのではないか。半そでの腕は直射日光を浴びほてっている。早くも日焼けし始めているようだ。
また移動日の今日はジーパンをはいているが、これが汗を吸って足にまとわりついて不快である。
ドリンクを1口飲み、喉の渇きを癒す。
虫除けの意味も込めサングラスと帽子を装着し出発。
交差点を直進すると、道が悪くなった。舗装がところどころほころびている。
冬の間に雪が積もる影響でひび割れを起こすのだろうか。そんなことを考え、道路を気にしながら走るうちにあることに気付き始めた。
さっきから、道路に黄色い虫の死骸が目立つ。スピードを緩めながらその虫を確認。 「!」 スズメバチ?あるいはアブの一種なのだろうか?
この虫がさっきから私の周りを飛んでいる虫なのか?死骸はみな最近の物のようだ。ひからびている物はない。
なぜ、こんなに大量に死んでいるのだろうか?
その時、1台の車が後ろから通り過ぎる。「ベチッ!」。小石が車に当たったのか、
なんか硬いものがぶつかるような音がした。そしてすぐに私の目で、その黄色い虫がポトリと地面に落ちた。なぞが解けた。
この虫は車との衝突で死んでいるのだ。
やはりその正体が知りたいので自転車を止め、じっくりと見た。
スズメバチだ。
そう確信し、少し血の気が引いた。今周りをブンブン飛んでいるのも・・・。
一目散にその場を立ち去る。
しかし、依然としてリアの黒いバッグめがけてハチが突進してくる。こんな状態でキャンプができるのだろうか。
どうやら、キャンプ計画は立て直さなければならないようだが、今はとにかく、自然への恐怖で心細く、人の気配を感じたくて、山花公園オートキャンプ場を目指した。