1日目 出発
1日目 出発
いよいよ出発の朝だ。
ほとんど仮眠という感じの浅い眠りから目覚めると、なぜかそれほど寝不足という感じはなかった。
おそらくこれから始まる旅行への期待と不安が神経を昂ぶらせていたからだろう。
昨夜用意した荷物を玄関まで運ぶ。
輪行バッグに収納されたMTB(マウンテンバイク)、テント・寝袋・食器類などキャンプ用品が詰まったバッグ、
衣類・修理セット・ミニポンプなどが詰まったバッグ、財布・地図・航空券などすぐに使いそうなものを詰めたリュックサック。
本当に1人で持ち運べるのだろうか?集まった荷物を見てかなり不安になる。
何しろ、深夜3時にようやく荷造りを終えるほど計画性のない旅行である。
しかし、そこは気合いで乗り切る。とにかく歩く時だけ持てればいいんだ。そう自分に言い聞かせ、すべての荷物を持ち、家を出る。
大きなランドセルを背負いフラフラ歩く小学生のように、私は荷物の重心に気を遣いながら、慎重に歩を進める。
早朝だというのに、
8月の太陽は容赦なく照り付けてくる。
徒歩3分の最寄の駅が果てしなく遠くに思える。あごや額から汗がしたたり、それを拭いたいのだが、
両手がふさがっている。
駅に着く頃には、両肩から提げた旅行バッグと輪行バッグの重みで体中きつくしばられているかのような錯覚を覚えていた。
電車への搬入もまた気を遣う。
私のMTBは、輪行バッグに詰まっているとはいえ、サイズ的には通常時の80%くらいまでしかコンパクトにならない。

輪行バッグに収納されたMTB
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ドアにひっかからないように素早く車内に搬入する必要があった。
早朝なので、乗客は少ないものの、みな物珍しそうにこちらを見ている。
しかし私は私で、そんなことを気にしている余裕などなく、渋谷までの20分間で何とか体力を回復させることだけを考えていた。
人間の慣れというのは恐ろしい。
渋谷での乗り換え時には、だんだん、荷物を運ぶ際のポイントがわかってきた。持ち方も、工夫しながら、
それなりに楽に持ち運べるポジションを発見した。
ただ、体力は相当使っているようで、とにかく汗をかいた。
山手線の車内で、大きな荷物を抱え、息を切らして必死で汗を拭いている姿は、われながら怪しかった。
ようやく浜松町に着き、東京モノレールで羽田空港まで向かう。モノレール車内は、旅行者を想定しているため荷物を置く場所も充実しており、やっと一息つけた。
羽田空港に着くと、まずはMTBを荷物カウンターに預けた。その際、運搬時に壊れても文句を言わない旨の誓約書にサインさせられた。
MTBが壊れては今回の旅行は話にならないが、航空会社もいちいち弁償するわけにもいくまいから、ここは仕方ないだろう。
祈るような気持ちでサインをした。
次に、キャンプ用品が入ったバッグを預けようとしたら、キャンプ用ガスが危険物として持ち込み禁止になってしまった。
これは現地調達だな。とにかく、貴重品以外の荷物をほとんど預けてしまい、すごく身軽になり、ようやく旅行している気分になってきた。
冷たいお茶を買い、機内に乗り込む。窓側の席だ。
これから始まる旅行のことに思いを馳せ、地図を見ながら今日の予定コースをもう一度たどってみる。
初日である今日は、無理をせず、釧路空港から5kmの「山花公園オートキャンプ場」に泊まろうと思う。
テントの組み立てなど初めてのことが多いので、陽のあるうちにチェックインしたいからだ。

機内からの眺め
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1時間くらい経っただろうか。だいぶ高度が下がっているようで、窓の外には緑色の大地が広がって来た。おそらく北海道上空なのだろう。
緑色の中に川なのか道なのか、曲がりくねった線が何本も見える。
その、本州とは違う、スケールの大きい風景に、期待と不安が入り混じる。
そこには、地図で見た点と線の世界からは想像できない大自然が、広がっているように思えた。